BOOTH

POLARTEC

モールデン・ミルズ社(現在のポーラテック社)はボストン郊外のローレンスで 1865 年に創業 しました。元は紡績工場でしたが、第二次世界大戦後はポリエステル繊維を扱うようになり、や がて 1950 年代に入るとファッション界でフェイクファーが大流行します。同社もその製造で大 いに潤いましたが、しかし 70 年代後半になるとその流行も廃れて業績は悪化していきます。そ んな中、社の運命を大きく変える出来事が起こりました。パタゴニア社の創設者イヴォン・シュ イナードがローレンスの本社を訪ねて来たのです。当時イヴォン氏は濡れてもすぐ乾く化学繊 維に着目していました。そしてある日、彼の妻が素材見本市でモールデン・ミルズ社のフェイク ファーを発見し、試しにこれを使ってセーターを作ってみると、非常に温かく、雨に濡れても保 温性が落ちず、軽く振るだけで、あっという間に乾きました。これこそが新時代のアルパインウ エアだと確信したのです。これをきっかけに両社はアウトドア用素材の共同開発を始め、ポリエ ステル・フリースの開発に成功。この新素材は 1985 年秋からパタゴニアのラインナップに登場 し、瞬く間にアウトドアに浸透しました。しかし両社はその特許申請をあえてせず、その販売権 利を広く世界に公開しました。これにより北米ではもちろん、欧州でも広くフリースが使われる ことになり、90 年代に入ると全世界的なブームが訪れました。しかし 1995 年 12 月 11 日にモ ールデンミルズ社を大惨事が襲います。なんと本社工場で火災が発生し、火は瞬く間に延焼し、 3棟あったビルがすべて焼落ちてしまいました。幸いなことに4000名の従業員にケガはな く、当時のアーレン社長は、従業員全員の雇用を確保し、工場再建中も全ての従業員に給料を払 い続けました。その後会社は創業家のフィオレンステイン家から投資会社に譲渡され、さらに 2007 年からは別資本下に入り、現在の「ポーラテック LLC(合同会社)」に社名変更され、経営 を立て直すことになりました。このような悲劇にあったにもかかわらず、同社は不断の技術開発 を続け、2010 年には製造原料の 100%を回収ペットボトルとする PCR フリースの製造に成功し ました。その後も、通気性と収納性に優れた「レギュレーター(グリッド)フリース」、高い防 風性能を誇る「パワーシールド」、新世代の透湿防水素材といわれる「ネオシェル」など、最先 端素材を次々開発していきました。そして 2013 年にはアメリカ軍特殊部隊と共同で「動的保温」 をテーマとするまったく新しいインシュレーション素材「アルファ」の開発に成功。アウトドア の世界にまた新たな金字塔を打ち立てました。現在では同社はベースレイヤーから防水シェル まで、アウトドアで使われるあらゆるファブリックを製造する総合素材メーカーになっていま す。